Reported by N. Ishikawa & T. Ishizaki

我々がお世話になった診療所は,50年の歴史を持つFoster & Bauman Animal Health Centerである。この病院はマジソンとミルウォーキーのほぼ中間に位置するWatertownという所にある。Watertownは人口2万人で,とても落ちついた雰囲気の,自然と人の生活が調和しているような町である。

Foster & Bauman Animal Health Centerのスタッフは,獣医師6名(大動物担当4名,小動物担当2名),4名の診療助手と事務員である。診療所は獣医師6名のうち、大動物担当の3名と小動物担当の1名計4名の共同経営で運営されている。診療所の内部は薬品庫等のある地下室以外はほとんど小動物用の施設のように見える。大動物用の手術室もなく、手術は全て現地で実施している。管内には150〜200戸の農家(ほとんどが酪農家)があり、70〜100頭規模の農家が多いようである。だいたい朝8時頃に出勤し、8時半頃に診療に回り始める。土曜、日曜は1人勤務の当番制で、夜間診療も交代で担当するとのことであった。

診療の内容は、繁殖チェックと一般診療、ワクチネーションが主で、システム化した乳房炎管理や栄養管理は行っていない。繁殖チェックを定期的に実施している農家は25戸程で、小さな農家で1回/月、大きな農家で2回/月行う。管理にはコンピューターソフトの「Dairy comp305」を使用しているとのことであったが、残念ながら実際にデータを入力したり、出力した成績を農家に説明するような場面には遭遇できなかった。料金は1時間あたり75ドルである。

繁殖チェックはまさにチェックであり、獣医師が直検をしながら伝える内部所見を農家の人がノートにメモしていく。そして、必要な処置を獣医師が畜主に指示していく。指示している治療の内容はほとんどがGnRHかPGF2αの使用とその時期である。ただ、フレッシュチェックは重視しているらしく、分娩後2週頃の牛も診ていた。このことと関連しているのか胎盤停滞は必ず取るようにしており、取れないものについてはエストラジオールを投与し、3日後に再チャレンジするとのことであった。悪露停滞状態になっているものでは、カテーテルにて内容物を排除し、イソジン液、ヒビテン液を注入するなど産褥期の子宮感染には神経を使っているようであった。しかし、繁殖治療として子宮内薬液注入をするところを見たのは、1戸の農家でだけであった。それも畜主が強く希望しているからで、「理由はI don't know」と先生も言っていたぐらいである。

一般診療については、我々の場合とそう大差はないようであるが、注射器や針等の消毒は大雑把のように見える。第四胃変位の手術を1頭だけ見ることができたが、スタンチョンで畜主に尾を持っていてもらうだけの保定で、枠場を使うこともなく、非常に早いスピードでやり終えてしまった。子牛の臍ヘルニアの手術もあったが、こちらの方はかなり丁寧であった。また、蹄病の治療が多く、ロープを上手に使って、牛舎内で処置していた。ロープを吊るすために牛舎内の梁に架ける鉄製のごついフックはなんと1885年製造の代物であった。削蹄は、20%の農家は自分で、10%の農家は全く行わず、残りの70%の農家はプロの削蹄師に頼んでいるとのことであった。

彼らは直接治療をする事は少ないものの、診療の方法や考え方は全く同様であると感じた。我々は共済制度のなかで診療を行っている。様々な制約があるものの、基本的には国家保証の形で、その恩恵を我々も農家も受けている。彼らにはそのような制度はない。基本的には時間単位での現金取引である。その違いが反映しているだけであろう。診療費の取りはぐれ等の心配もある彼らは共済制度に大変な興味を持ち、英語のほとんどできない我々(地図を買いに行き、ストアーの店員にモップ売り場に案内されたのは我々です)は悪戦苦闘してしまった。

彼らは朝早くから良く働き、とにかく明るい。管内はほとんどが酪農家であるが、多くの動物がいて、バッファロー・馬・ラマ・アルパカ・エミューなどを診療することもあるらしい。担当制ではあるが、診療所にはたくさんの犬・猫も来る。まさに獣医師らしい獣医師として働いている。今回のセミナーの題目はプロダクションメディスンとなっていたが、実習させていただいたFoster & Bauman Animal Health Centerは、おそらく、一般的な診療所であったと思う。日本にはアメリカの最先端の情報は入って来るものの、ごく一般的な獣医師や農家のことについては、私は全く知らなかった。そういう意味でこの実習はすばらしい経験であった。考えさせられ、共感し、参考にさせてもらった。あらためて、後藤先生、畳先生、Whitmore先生そして、チンパンジーほどの言語能力の我々に優しく対応してくれたFoster & Bauman Animal Health Center の先生方に心より感謝いたします。

以上

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