
7.感 想
1) セミナーについて
参加費が安く、講義・視察・実習の3つが体験でき短期間の中で最大に成果を得ることができた。獣医学的なことが多いので語学の問題は感じなかった。
2) プライベートプラクティスについて
4日間はかなり短く感じられ、獣医師同志なのでお互いの知見を交換することができ、アメリカの臨床獣医師の姿をみると同時に日本の状況も知らすことができて彼等にとっても少しは役立てた様な気がしています。
3) 農家について
事実を話しすれば、環境は一見良さそうだが、牛舎は暗くきたない。牛は小さく、汚れていて関節炎、過長蹄、削痩牛がかなり多い。たぶん給与飼料が不足しているからでしょう。これは自給飼料であるデントコーン、スイートコーンの畑が栄養不良で追肥もせず、たとえしても表面から浸透せず雨で流れてしまうようです。よってコーンは小さく細く、糖分も少ない。アルファルファもあまり良くないようです。農家はある程度の広さの土地と牛舎をもっているので日本の飼料技術を見習った方が牛の能力、経済力もつくのではないでしょうか。
4) 獣医師について
私が実習した診療所では仕事依頼量が少なく、経営的に苦しいようです。経営者は無く、共同出資で成り立っている。獣医師は大動物をやる者はすべて小動物も見、市街地では小動物専門があるそうですが、日本のように大動物、小動物という区別ははっきりしていない。診療所の獣医師は全て牛の診療より豚の診療を好み、利益が牛にくらべて良いようです。
仕事内容は、プロダクションメディスン的仕事は皆無でした。エサの指導をしない。農家側も一般疾病、繁殖、妊鑑を定期的に依頼するが、もっと利益を上げるという相談はなかった。
5) 獣医技術について
畜主とのコミュニケーションには長時間をかけ、診断するまでかなり会話をし、治療方針をよく説明しそして治療、治療後も予後判定などを話し合う。これは私は見習うべき事として感じました。しかし、直腸検査の時間が長く、妊娠鑑定に要する時間が長く、私の2倍の時間をかけているので指先はにぶいようです。また、繁殖治療はほとんどGn-RHのみを投与している。もっと幅広いPG,FSHなどの治療も行うべきです。
衛生面についてはかなりひどい状況です。消毒は、インジェクターをバケツにイソジンを入れたものに長ぐつ洗浄ブラシと一緒に入れて、すすぐだけ。注射針とシリンジは壊れるまで使う。注射部位の消毒はなし、連続注射器は水洗のみ。よって注射部位は化膿、腫瘍を形成している。かなりアメリカ的で、日本よりいいかげんに行なわれています。これでは白血病やブルータング等伝染病が多いのは当然で、多価ワクチンを使う理由は、獣医師の為のワクチネーションのような気がします。この様な状態では農家の利益を上げるのは難しく、獣医師の所得も上がる訳はありません。
日本よりアメリカの方が進んでいると思い込んでいた私としては残念でした。プロダクションメディスンの発想と実施はすばらしいが、その他は目をおおうしかないようです。小動物においても消毒、治療はよくなかった。
6) 次回のセミナーに望むもの
視察、ホーズデイリー記念館、全米獣医師会などはあまり意味がないと思います。それより、ツアー全員に大規模農場、近代的農場、模範的PM実践治療を何ヶ所か見ないとプライベートプラクティスだけでは当りはずれがあるようです。またマジソンの近くにABSの授精所があり、是非見学したかったです。
プライベートプラクティス、前述のように当りはずれがある事、今回は初めてなので参加者の意見にもとづいて次回からレベルの低い診療所は除外すべきだと思います。
・準備について
出発前にだいたい予想できる講義内容を事前に知っておき、専門用語など勉強しておけば、より深く理解する事ができるのではないでしょうか。
・参加者リスト
リストが出来上がった段階で、一人一人のプロフィールを紹介し、事前にどの様な方が参加するか解ればもっと交流がはかれるのではないでしょうか。
・セミナー参加者とアメリカとの交流
日本の診療技術を畳先生、後藤先生、左向先生方がアメリカ臨床獣医師に対して消毒、技術、日常診療内容を講義することで日本への理解が深まり、プライベートプラクティスではそれなりの診療所を選ぶことができると思います。
7) LAVAの会について
この会は日本の臨床獣医師の会として、共済、組合、公務員、開業が一体となって幅広い活動ができると思いますので、事務局へ協力できることは何でもします。金銭的なものまで援助しますので、是非会員の意見を反映し日本の獣医師と農家の為に頑張りましょう。(案)
・年会費をとる。
・定期的に季刊誌の発行,内容、記事は全員持ち図りで役員の矯正をあおぐ。
・アメリカからの情報をいち早く伝える。
・全国的に3ケ所くらいに分けるか、1ケ所で講師を招いて講習会、懇親会を開催する。
・新しい会員はどんどん入会させる。
・やがて会員数が増えて、それぞれの研究成果などを発表し合い、学会として認められるようになればすばらしい獣医師集団となることでしょう。